バス・タクシーの旅客事業では「業務前点呼」「業務後点呼」「業務途中点呼」と呼びます。トラックの貨物事業でいう「中間点呼」と、旅客の「業務途中点呼」は実施する条件がまったく違います(詳しくはこちら)。貨物向けの教材やサイトをそのまま覚えると失点するので注意してください。なお「乗務前・乗務後」という古い表記は、令和5年4月の改正で「業務前・業務後」に変わっています。
📑 このページの内容
🚌1日の点呼の流れ(全体図)
まずは全体像です。点呼は「出庫前」と「帰庫後」の2回が原則で、これに加えて一定の条件を満たす運行だけ、運行の途中でもう1回行います。
①と③はすべての旅客事業者・すべての運行で必要。②は一般貸切旅客自動車運送事業者が夜間の長距離運行を行うときだけ必要です。「毎回3回やる」ではありません。
📋3種類の点呼 比較表
混同しやすいところを一覧にしました。誰に・いつ・何を確認するかの3点で覚えます。
| 区分 | 業務前点呼 | 業務後点呼 | 業務途中点呼 |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 規則第24条第1項 | 規則第24条第2項 | 規則第24条第3項 |
| 対象事業者 | 旅客事業者すべて | 旅客事業者すべて | 一般貸切のみ |
| 実施条件 | 運行の業務に従事しようとするとき | 運行の業務を終了したとき | 夜間において長距離の運行を行うとき |
| 回数 | 1回 | 1回 | 業務の途中に少なくとも1回 |
| 酒気帯びの有無 | 確認する | 確認する | 確認する |
| 疾病・疲労・睡眠不足 | 確認する | 確認しない | 確認する |
| 日常点検 | 実施又は確認 | 対象外 | 対象外 |
| 運行状況の報告 | 対象外 | 自動車・道路・運行 | 対象外 |
| 安全確保の指示 | 与える | 条文上なし | 与える |
🌅業務前点呼の確認事項
条文では、運転者と特定自動運行保安員をまとめて「運転者等」と呼び、次の事項について報告を求め、確認を行い、必要な指示を与えると定めています。
二 運転者に対しては、酒気帯びの有無
三 運転者に対しては、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無
四 特定自動運行保安員に対しては、自動運行装置の設定の状況に関する確認
旅客の条文では日常点検が第1号に来ているのが特徴です(貨物は酒気帯びが先)。順序を問う出題はまれですが、「業務前点呼で日常点検の確認をするのか」は繰り返し問われます。答えはするです。
報告・確認・指示は3つセット
- 報告を求める…運転者側から申告させる(日常点検の結果、体調など)
- 確認を行う…運行管理者側が目視等とアルコール検知器で確かめる
- 指示を与える…天候、道路状況、注意すべき区間など運行の安全に必要な事項
日常点検の結果を踏まえて運行の可否を決定するのは整備管理者(またはその職務を委譲された整備管理補助者)です。運行管理者が行うのは「日常点検が実施されたこと・その結果の確認」まで。ここを取り違えた選択肢がよく出ます。
🌙業務後点呼の報告事項
業務後点呼で運行管理者が求めるのは、次の報告と確認です。
報告してもらう「3つの状況」
- 事業用自動車の状況…故障、異音、警告灯、損傷など
- 道路の状況…工事、通行止め、路面凍結、渋滞など
- 運行の状況…遅延、ヒヤリハット、旅客対応の特記事項など
交替した場合の「通告」
ワンマンでない運行では、運転を交替するときに、前の運転者が次の運転者へ自動車・道路・運行の状況を通告します(運転者の遵守事項)。業務後点呼では、その通告を行ったこと自体についても報告を求めるのがポイントです。「交替運転者への通告は運転者同士の話だから点呼では扱わない」という選択肢は誤りです。
🛣️業務途中点呼(一般貸切・夜間長距離)
ここが旅客と貨物で最も差がつくところです。旅客の業務途中点呼は、「対面でできないから途中でやる」ものではありません。夜間の長距離運行そのものが危険だから途中でもう1回確認するという制度です。
「業務前と業務後がどちらも対面でできないときは、途中で点呼をするんですよね」
旅客の業務途中点呼とは要件がまったく違う。
旅客ではどういうときに必要なんですか?
対面できるかどうかではなく、その運行自体が危険だから途中でもう1回確認するという制度だぞ。
貨物の中間点呼=業務前・業務後の点呼がいずれも対面等でできないとき(貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条第3項)。
貨物向けの教材をそのまま覚えると、ここで失点します。
| 比較 | 旅客の業務途中点呼 | 貨物の中間点呼 |
|---|---|---|
| 根拠 | 旅客自動車運送事業運輸規則 第24条第3項 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則 第7条第3項 |
| 実施する条件 | 一般貸切事業者が夜間において長距離の運行を行うとき | 業務前・業務後の点呼がいずれも対面等でできない業務のとき |
| 対象 | 一般貸切旅客自動車運送事業者 | 貨物自動車運送事業者 |
| 方法 | 国土交通大臣が定める方法(困難な場合は電話その他の方法) | 電話その他の方法 |
「夜間において長距離の運行」の判定基準
解釈及び運用について(通達)で、次の2つを両方満たす運行と定義されています。運行指示書上で判定します。
実車距離100km超と午前2時〜4時。この2つはそのまま出題されます。「実車運行」には回送は含まない点、旅客が乗っていない区間でも乗車可能として設定した区間なら実車運行になる点も要注意です。
🔀点呼の方法 ─ 対面・遠隔点呼・自動点呼・旅客IT点呼
点呼は対面が原則です。ただし、対面と同等の効果があるものとして国土交通大臣が定める方法(点呼告示)で行うこともでき、さらに例外として電話その他の方法が認められる場合があります。3階層で整理しましょう。
遠隔点呼
令和4年4月1日に始まり、その後点呼告示(対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示)に統合された制度です。従来のIT点呼と違い、営業所の優良性(Gマーク等)を問いません。機器・システムの要件、施設・環境の要件、運用上の遵守事項を満たし、運輸支局へ届け出れば実施できます。実施できる場所は、営業所と車庫の間、同一事業者内の営業所間、グループ企業の営業所間などです。
遠隔点呼は対面と同等に扱われるため、遠隔点呼で業務前・業務後を行った場合は、電話点呼のときと違って業務途中点呼の要否の考え方も変わります(旅客では夜間長距離が判定基準なので、まずそちらを優先して考えます)。
自動点呼
国土交通省が認定した機器を用い、運行管理者等の立会いなしに運転者自身が点呼を受ける仕組みです。まず業務後自動点呼が認められ、その後令和7年4月30日の点呼告示改正で業務前自動点呼が制度化されました(同日施行)。遠隔点呼は機器の認定制度がなくなりましたが、自動点呼は認定機器が必須という違いを押さえてください。
旅客IT点呼
カメラ・モニター等の機器を使う旅客事業版のIT点呼です。輸送の安全確保の取組が優良と認められる営業所に限られ、実施できるのは営業所と当該営業所の車庫の間などに限定されます。営業所の要件は次の3つです。
- 開設されてから3年を経過していること
- 過去3年間、所属する運転者が自らの責に帰する自動車事故報告規則第2条に規定する事故を発生させていないこと
- 過去3年間、自動車その他の輸送施設の使用停止処分、事業停止処分又は警告を受けていないこと
点呼告示が改正され、遠隔点呼を実施している営業所間であれば、A営業所所属の運転者がB営業所で出庫・帰庫する際にB営業所の運行管理者等が対面で点呼を行えるようになりました。この場合の取扱いは「遠隔点呼」となります。試験にすぐ出るとは限りませんが、実務では大きな緩和です。
⚠️「運行上やむを得ない場合」の落とし穴
だから電話で点呼してもいいですよね?
それは「運行上やむを得ない場合」には当たらない。
監査で必ず指摘されるぞ。
じゃあ、どんなときならOKなんですか?
車庫が遠い、担当者が出勤していない——そういう営業所側の都合は理由にならない。
本来は運行管理者を車庫へ派遣して対面で行うんだ。
該当しない=車庫と営業所が離れている/早朝・深夜等で点呼執行者が出勤していない。
会社が体制を整えれば解決できる問題は、対面をしなくてよい理由になりません。
電話その他の方法が使えるのは「運行上やむを得ない場合」だけです。通達では、この意味がはっきり限定されています。ここは毎年のように出題される定番のひっかけです。
| 該当する(電話点呼OK) | 該当しない(電話点呼NG) |
|---|---|
| 遠隔地で業務を開始・終了するため、運転者等が所属する営業所で対面点呼を実施できない場合 | 車庫と、その車庫を所管する営業所が離れている場合 |
| ─ | 早朝・深夜等で、点呼執行者が営業所に出勤していない場合 |
「営業所側の都合」は理由になりません。車庫が遠い・担当者が出勤していないのは事業者が体制を整えれば解決できる問題なので、対面点呼をしなくてよい理由にはなりません。営業所と車庫が離れているなら、運行管理者等を車庫へ派遣して対面で行うのが本来の姿です。
「運行上やむを得ない」=運転者が遠方にいて物理的に会えないときだけ、と覚えましょう。
なお、所属営業所以外の自社営業所で業務を開始・終了する場合は、より安全を確保する観点から、その営業所で酒気帯びの有無や健康状態を可能な限り対面で確認するよう指導することとされています。
🍺アルコール検知器のルール
酒気帯びの確認は、点呼の中でも最も厳しく運用されている項目です。
- アルコール検知器を営業所ごとに備え、常時有効に保持すること
- 酒気帯びの有無の確認は、運転者の状態を目視等で確認するほか、当該運転者が所属する営業所に備えられたアルコール検知器を用いて行うこと
- 業務前点呼・業務後点呼・業務途中点呼のいずれでもアルコール検知器を使用する
基準の0.15未満なので、問題ないですよね?
点呼での酒気帯びの確認は、数値の如何を問わない。
道交法では基準未満だと聞きましたが……
点呼は運輸規則の話で、アルコールが少しでも検知されたら業務に従事させてはいけない。
この2つは別物だぞ。
つまり基準値未満でも、検知されれば乗務させることはできません。
「0.15mg/L未満だったので乗務させた」という選択肢は必ず誤りです。
通達では「酒気帯びの有無」とは、道路交通法施行令に規定する血液中アルコール濃度0.3mg/mL又は呼気中アルコール濃度0.15mg/L以上であるか否かを問わないとされています。つまり基準値未満でも、アルコールが検知されれば業務に従事させることはできません。「0.15mg/L未満だったので乗務させた」という選択肢は必ず誤りです。
遠隔地で業務を開始・終了する運行では、運転者に携帯型のアルコール検知器を携行させる運用が求められます。また一般貸切事業者は、アルコール検知器で確認を行う際に呼気検査の状況の写真を撮影し、その電磁的記録を90日間保存することが義務づけられています(点呼を録画している場合を除く)。
📝点呼記録と保存期間
点呼を行い、報告を求め、確認を行い、指示をしたときは、その内容を運転者等ごとに記録します。記録事項は次のとおりです。
- 点呼を行った旨、報告・確認・指示の内容
- 点呼を行った者及び点呼を受けた運転者等の氏名
- 運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号その他その自動車を識別できる表示
- 点呼の日時
- 点呼の方法
- その他必要な事項
保存期間は事業の種類で変わる
| 記録の種類 | 原則 | 一般貸切旅客 |
|---|---|---|
| 点呼の記録 | 1年間 | 3年間(電磁的記録) |
| 業務記録 | 1年間 | 3年間 |
| 運行指示書 | 1年間 | 3年間 |
| 点呼の録音・録画 | 義務なし | 90日間 |
| アルコール検査時の写真 | 義務なし | 90日間 |
一般貸切旅客自動車運送事業者の保存期間が3年間に延長され、点呼の録音・録画(電話点呼の場合は録音のみ)の90日間保存が義務化されたのは、令和6年(2024年)4月1日からです。2022年の静岡県での貸切バス横転事故などを受けた安全対策の強化によるものです。
2024年3月以前に書かれた教材では、点呼記録の保存期間が「1年間」だけで説明されていることがあります。貸切バス(一般貸切)は3年間です。旅客の試験では貸切バスを前提にした出題も多いので、両方セットで覚えてください。
👥運行管理者と補助者の分担(3分の1ルール)
点呼は運行管理者だけでなく、運行管理補助者に一部を行わせることができます。ただし丸投げはできません。
これで点呼は全部その人に任せられますね!
運行管理者自身が行う点呼は、総回数の3分の1以上でなければならない。
ということは、補助者に任せられるのは3分の2までですか?
それと、補助者が点呼で異常を認めたときは、その場で判断させず運行管理者に報告させる体制にしておくこと。
「補助者に点呼の全部を行わせることができる」は誤り。補助者になれるのは、運行管理者資格者証を有する者または基礎講習を修了した者です。
補助者を選任して点呼の一部を行わせる場合でも、その営業所で選任されている運行管理者が行う点呼は、点呼を行うべき総回数の少なくとも3分の1以上でなければなりません。
つまり補助者に任せられるのは最大3分の2まで。「補助者に点呼の全部を行わせることができる」は誤りです。
補助者になれるのは、運行管理者資格者証を有する者、または国土交通大臣が認定する基礎講習を修了した者です。また、補助者が行う点呼で異常を認めたときは、その判断を補助者だけで完結させず、運行管理者に報告して指示を受ける体制にしておく必要があります。
✅ひっかけ○✕チェック 11問
本試験でよく問われる形に近い文です。答えを隠して考えてみてください。
| 問題文 | 正誤 |
|---|---|
| 業務前点呼では、日常点検の実施又はその確認を行わなければならない。 | ○ |
| 業務後点呼では、酒気帯びの有無のほか、疾病・疲労・睡眠不足の状況についても確認しなければならない。 | ✕ 業務後は酒気帯びのみ |
| 車庫と営業所が離れていて対面点呼ができないので、電話により点呼を行った。 | ✕ やむを得ない場合に該当しない |
| 早朝で点呼執行者が営業所に出勤していないため、電話により点呼を行った。 | ✕ 同上 |
| アルコール検知器の測定結果が呼気1L中0.15mg未満だったので業務に従事させた。 | ✕ 数値の如何を問わない |
| 酒気帯びの有無は、運転者の顔色や呼気の臭いなど目視等の確認で足りる。 | ✕ 目視等+検知器が必要 |
| 業務途中点呼は、業務前・業務後の点呼がいずれも対面でできない業務のときに行う。 | ✕ それは貨物の中間点呼 |
| 一般貸切事業者が夜間に長距離の運行を行うときは、業務の途中で少なくとも1回点呼を行う。 | ○ |
| 点呼の記録は、一般貸切旅客自動車運送事業者は3年間保存しなければならない。 | ○ |
| 補助者を選任すれば、点呼の全部を補助者に行わせることができる。 | ✕ 運行管理者が1/3以上 |
| 遠隔点呼は、輸送の安全確保の取組が優良と認められる営業所でなければ実施できない。 | ✕ 優良性は要件ではない |
✏️試験直前の総チェック
以下がすべて即答できれば、点呼は完成です。
| 問い | 答え |
|---|---|
| 業務前点呼の確認事項は?(運転者) | 日常点検の実施又は確認/酒気帯びの有無/疾病・疲労・睡眠不足等のおそれ+必要な指示 |
| 業務後点呼で報告を求める3つの状況は? | 事業用自動車・道路・運行の状況 |
| 業務後点呼で確認するのは? | 酒気帯びの有無(+交替時は通告の報告) |
| 業務途中点呼が必要な事業者は? | 一般貸切旅客自動車運送事業者 |
| 「夜間において長距離の運行」の要件は? | 実車運行区間が100km超、かつ実車運行の開始・終了時刻が午前2時〜4時にある/またぐ |
| 点呼の原則的な方法は? | 対面(例外=運行上やむを得ない場合の電話その他の方法) |
| アルコール検知器はどこに備える? | 営業所ごとに備え、常時有効に保持 |
| 酒気帯びの判断基準となる数値は? | 数値の如何を問わない(0.15mg/L未満でも不可) |
| 点呼記録の保存期間は? | 1年間(一般貸切は3年間) |
| 一般貸切の点呼の録音・録画の保存期間は? | 90日間 |
| 運行管理者自身が行う点呼の割合は? | 点呼を行うべき総回数の3分の1以上 |
| 旅客IT点呼の営業所要件は? | 開設3年経過/過去3年間無事故/過去3年間無処分 |
| 業務前自動点呼が制度化されたのは? | 令和7年4月30日(点呼告示改正) |
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